日本気管食道科学会会報
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症例
術前の画像診断にて気管支異物との鑑別が困難であった鋳型気管支炎の1例
伊東山 舞宮丸 悟折田 頼尚
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2022 年 73 巻 3 号 p. 237-244

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抄録

気道異物は救急疾患の一つであるが,鋳型気管支炎を耳鼻咽喉科で経験することは稀である。当施設で経験した1症例を報告する。症例は4歳の男児,生来健康でアレルギー性疾患の既往はなかった。X年8月に溶連菌感染症,9月にヒトニューモウイルス感染細気管支炎に罹患し軽快した。10月に再度発熱し肺炎の診断で入院となった。しかし症状が改善せず,画像検査の結果,ナッツ類による気道内異物が疑われ当科へ転院となった。緊急での気管支鏡検査を行い,粘液栓による鋳型気管支炎(Plastic bronchitis:PB)の診断となった。PBは1902年に初めて報告された疾患である。本邦にて1992年から2020年までに報告されているType Ⅰの小児PBに対して気管支鏡を用いて診断・治療した37例に加え,本症例を含めた計38例を検討した。10例で初回の気管支鏡処置だけでは完全に粘液栓を処置できなかった。1例で死亡,2例で心肺停止後の脳症の残存と不幸な転帰を辿っていた。PBの診断・治療には気管支鏡検査が有用であり,処置中だけでなく処置後も慎重な呼吸状態の観察が必要である。

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