日本気管食道科学会会報
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症例
腕頭動脈による気管狭窄および重度嚥下障害に対して予防的腕頭動脈離断術後に喉頭気管分離術を行った1例
首藤 洋行, 陣野 智昭, 石田 知也, 杉山 庸一郎
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2026 年 77 巻 4 号 p. 273-279

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抄録

気管切開術後の合併症の中でも重篤かつ致命的なものとして気管腕頭動脈瘻が知られている。気管腕頭動脈瘻を確実に回避する方法として予防的腕頭動脈離断術があるが,明確な適応基準は確立されていない。今回われわれは腕頭動脈による気管狭窄および重度嚥下障害に対して予防的腕頭動脈離断術後に喉頭気管分離術を行った1例を経験した。症例は20代男性で,脳出血の治療経過中に気管切開が行われた。入所施設の嘱託医(耳鼻咽喉科医)より,気管内肉芽の管理やカニューレの位置調整に難渋しており,加えて慢性唾液誤嚥もあることからカニューレフリーかつ誤嚥防止が可能な誤嚥防止手術目的に当科紹介受診となった。気管支内視鏡検査でカニューレ先端の肉芽や気管狭窄を認め,造影CTでは気管は腕頭動脈と椎体により圧排されて狭窄をきたしており,カニューレ先端は腕頭動脈のごく近傍に位置していた。カニューレ先端を腕頭動脈より頭側に設定すると,気管狭窄により換気不良となるためカニューレ抜去は困難な状態であった。カニューレ留置継続によりいずれ気管腕頭動脈瘻を発症するリスクは高いと判断し,まずは気道確保および出血予防として予防的腕頭動脈離断術を行った。術後も嚥下障害は持続していたため,続いて誤嚥防止目的に喉頭気管分離術を行った。カニューレの慢性的刺激により気管前壁が脆弱化していたため,気管再狭窄が起こらないような工夫を行った。術後気管は開存しており,経口摂取も可能となった。気管狭窄や気管腕頭動脈瘻のリスク,嚥下障害を有した複雑な病態であっても,適切な順序で対処することで気道確保および出血予防,誤嚥防止のいずれも可能であった。

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