2008 年 10 巻 2 号 p. 39-45
ステレオ法を用いた立体の3次元形状復元では,カメラで共通に観察される部分しか復元されないため,全周モデルを作成するには部分的に復元された形状をつなぎ合せる必要がある.このため厳密なカメラキャリブレーションが必要であり,3次元復元の効率化を妨げている.本稿では,因子分解法の適用により,簡便なカメラキャリブレーションに基づく,つなぎ合せを行わない全周復元法を提案する.まず物体を囲むように複数のカメラを配置し,全カメラで共通に観察される物体上の特徴点に因子分解法を適用して,全カメラの方向および特徴点の3次元座標を求める.次に前面カメラの方向および前面カメラでしか観察されない物体上の特徴点の画像座標から,それらの特徴点の3次元座標を計算し,また後面カメラの方向および後面カメラでしか観察されない物体上の特徴点の画像座標から,それらの特徴点の3次元座標を計算する.この手続きにより,物体の全周の特徴点が復元される.実験により提案法の有効性が示された.