バイオメディカル・ファジィ・システム学会誌
Online ISSN : 2424-2578
Print ISSN : 1345-1537
ISSN-L : 1345-1537
分子機械の確率的エネルギー論 : ミクロとマクロを結ぶ設計論-1
松浦 弘幸中野 正博野田 信雄小井手 一晴山中 真根本 哲也伊藤 安海
著者情報
ジャーナル オープンアクセス

2008 年 10 巻 2 号 p. 99-106

詳細
抄録

中間領域の力学は,複素拡散方程式で記述できる.拡散係数や質量対応項をどの様な数値を採用するにより,原子・分子の基礎方程式(シュレディンガー方程式)から,宇宙規模に至るまで表現できた.この方程式が,成立する条件は,現象の根底に拡散過程やマルコフ過程が存在するが求められる.分子機械は,熱ノイズと共存する機械である.周囲の環境と共存し,周囲の環境から共鳴現象(確率共鳴)を通して効果的に運動器にエネルギーを取り入れている.もし,共鳴現象が存在しなければ,エネルギーの伝達効率や動作効率は,非常に悪くなる.この共鳴現象は,量子力学的には運動器の分子構造全体での協調運動でありコヒーレント現象である.我々は,単純な確率共鳴型の分子機械としてStochastic Inclined Rods Model (SIRM)を提案して,その動作を解析した.確率共鳴によりエネルギーを得たSIRMは,ドリフトを伴うブラウン運動(並進運動+ブラウン運動)行う.確率共鳴が生じるためには,速度の2乗より高次の散逸子が必要である.この散逸項が存在する時,分子機械に並進運動が発生し,ATPの加水分解の熱が新たに散逸力に加わる.そして,散逸力が分子機械に加えられた外力と結合して,力学・散逸力結合というべき関係が生じている.つまり,高次の非線形散逸力は,外力と結びついて分子機械を動かす動力となりえることが判明する.

著者関連情報
© 2008 Biomedical Fuzzy Systems Association
前の記事 次の記事
feedback
Top