抄録
医療コミュニケーション言語を音声認識ソフトで認識させる場合の問題点につき検討した.音声認識ソフトDragon Naturally Speaking 2005(ScanSoft)を用いて,日常診療用語を音声でワープロソフトMicrosoft Wordに入力し,音声認識ソフトの認識精度,誤変換について検討した.日常診療用語として,繁用日常診療用語・文書と,6つの診療シナリオを作成し,実際にディクテーションを行いWord文書に記録して,各単語,文節の変換しやすさ,誤変換につき検討した.総抽出語数は9464語で,誤変換された単語・文節341語(3.6%)のうち,トレーニングで比較的容易に変換されたもの77.3%,変換困難なもの8.5%,変換きわめて困難なもの14.2%であった.誤変換の原因については,同音異義語,発音,辞書への未登録,表記上変換困難などが考えられた.音声認識ソフトを日常診療に利用するためには,医療コミュニケーションに用いる独自の言語,辞書を作成することも課題の一つである.