抄録
繰り返される刺激音列の中に、低い確率で僅かに異なる音を呈示すると、脳内では刺激音の違いが自動識別されて、頭皮上に陰性電位(MMN)が観察される。本研究の目的はMMN応答を指標にして、合成音の音質評価を客観的に実現することである。合成音は80Hzから5,120Hzの周波数帯域を1オクターブ毎に6分割し、濾波波形から取得した極値データを正弦波補間することで組み立てられた。合成音声(男声音節/ki/)に対してMMN応答が観察されなかった事から、極値データは原音と遜色のない音質を合成するために必要な情報を有していることが示唆される。同音節とノイズ(ドアの音)に、不連続点や歪みを伴う補間法を適用したところ、合成音声にのみMMN応答が観察された。これは音声を詳しく分析するために、脳が特異な性能や機構を有していることを示唆するものである。