抄録
現在、工学・医療分野では核子あたり数百MeV以上の高エネルギー荷電粒子と物質との相互作用に関する知見が非常に重要となってきている。本論文では、荷電粒子と物質の相互作用によって生じる荷電粒子トラック構造を再現するために微視的モデルに基づいた3Dモンテカルロコード作成を行う事を目的とした。最初に、3Dモンテカルロコードに必要になる荷電粒子と電子との弾性散乱計算を行った。次に、放射線計測に用いられている塩化セシウム(CsI)をターゲットとして二次電子によるエネルギー付与の空間分布を求める3Dモンテカルロコードを作成した。計算結果は水素イオンとヘリウムイオンを入射させた場合の微視的モデルと巨視的モデルであるEDSEモデルでのエネルギー付与の空間分布の比較を行い、平均的な半径はほぼ一致するが、空間分布の揺らぎが無視できないと考えられる。