抄録
胸部MDCT画像を用いた診断においては,病変部の発見,経過観察のために新しく撮影された画像(現在画像)と,過去の検診で撮影された画像(過去画像)との比較読影が行われている.このとき,比較する画像の枚数が膨大であることから,読影医師にとっての負担増が問題となっている.この問題を解決するため,現在画像と過去画像との差分演算を行い,現在画像上に新たに発症した病変部を強調表示するための経時的差分画像を診断に用いることにより,読影効率の向上を目指した研究が行われている.経時的差分画像を用いることにより,過去・現在CT画像のみを用いた診断より,効果的に病変部を検出できる可能性が高いことから,研究開発への期待が高まっている.しかし,現状の経時的差分画像には画像間の位置ずれを原因とするアーチファクトが含まれており,アーチファクトを病変部と誤認識してしまう可能性がある.そこで本稿では,学習ベースの識別器を用い,胸部CT画像の経時的差分画像に現れた強調部分から,結節状陰影だけを検出するための手法を提案する.提案手法を胸部MDCT画像に適用し,検出精度を検証した結果について報告する.