本研究の目的は,看護場面で必要な数学・物理学的問題解決と演算能力を養成する際の,臨地実習指導者のもつ指導上の課題を明らかにすることである.臨地実習指導者として指導経験を持つ看護師を対象に,数学問題の問題解決法指導の実施場面を設定した.小学校算数の演算課題2 問,看護場面での文章題3問(薬液量,酸素ボンベの酸素残量,消毒薬濃度の計算問題)の計5問を設定し,「概念」「状況」「言葉」「単位」「計算式」の5 つ項目の理解を促進する指導について,4件法にて問題解決法指導の困難度の回答を求めた.有効回答105 名のデータを分析した結果,5問に共通して「概念」の問題解決法指導困難度が有意に高く,数学・物理学的思考を求められる場面での問題表象力の教育が困難であることが認められた.問題解決法において,概念理解をもとに問題表象が基盤となって適正な計算手続きへとつながるため,臨地実習指導者に対して概念理解や問題表象化を促せるための指導法教育支援が必要であることが示唆された.