2020 年 22 巻 1 号 p. 21-30
大気汚染物質の発生機構は大陸からの越境汚染や都市・生活型の大気汚染,さらには気象データにも依存する極めて複雑なものであるため,大気汚染物質の予測手法は現在も確立されていない.また,現在は数値モデルを用いたシミュレーションによる予測・解析が一般的だが高度な機器や専門知識を要し,広域的な予測にとどまっているため,地方自治体による注意喚起には適していない.そこで本論文では多次元データの解析手法の一つである自己組織化マップを用いた専門的な知識を必要とせず,低コストで簡易的な時系列予測を検証した.実際に鳥取県米子市の大気汚染物質濃度と気象データを用い自己組織化マップを作成し,大気汚染物質濃度の傾向の分析及び実用的な時系列濃度予測をすることで,より地域に密着した大気汚染物質濃度の予測を行った.また,鳥取県米子市以外のデータも加えて予測を行い実測値と予測値を比較して評価を行った.その結果,データ数が最も少ない鳥取県米子市のみの場合の予測が最も予測精度が高くなり,鳥取県米子市周辺の地形と追加したデータ地点との距離に原因があると考えた.