抄録
スマートフォンは,PC とほぼ同等の機能を有しており情報社会においては必須のツールとなった.特に,多くの人は,移動時に動画視聴,コミュニケーションアプリやゲームといった娯楽ツールとして利用している.アプリケーションに熱中し,途中で中断することができずに,駅のホームや街中には歩きながらスマートフォンを利用している人が大勢いる.このため,歩きスマホよる事故が多数発生しており,歩きスマホに関する注意喚起がされている.しかしながら,歩きスマホは一向に減少しない.そこで本研究では,歩きながらのスマートフォン使用の危険性を知覚認知の観点から検討した.実験では,スマートフォンを使用せず立っている状態,スマートフォンを使用して立っている状態,スマートフォンを使用せず歩いている状態,スマートフォンを使用して歩いている状態の有効視野を計測した.その結果,立位および歩行時のいずれの場合もスマートフォンを使用した場合は,スマートフォンを使っていない場合と比較して知覚精度が低下し,有効視野が 45~56%狭くなっていることが示された.つまり,スマートフォンを使用している場合には,周囲の状況に気づくことができないことを意味する.以上のことから,歩きながらのスマートフォン使用が危険であることが示された.