バイオメディカル・ファジィ・システム学会誌
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認知的対処方略の採用傾向とアイデンティティ及び自己受容との関連
張 亜倩 川﨑 聡大
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2021 年 23 巻 1 号 p. 53-62

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抄録

多くの研究において,楽観者は適応的であり悲観者は不適応的であると認識されている.しかし,過去のパフォーマンスを肯定的に認知し,将来については“悪い方に考える”ことで成功する防衛的悲観者が知られるようになった.本研究では,認知的対処方略(防衛的悲観主義,真の悲観主義,方略的楽観主義,統制群)の採用傾向とアイデンティティ及び自己受容との関連を検討した.東北圏の日本人大学生 225名(男性:84名,女性:141 名)を対象として 2020年 10 月に無記名の個人記入式質問調査を実施し,欠損のデータを除いた 210 名(男性:84 名,女性:126 名,平均年齢 20.63±1.67 歳)について分析を行った.K-means 法のクラスタ分析を行い,JDPI 因子の下位因子である「悲観」,「過去のパフォーマンス」,「肯定的熟考」及び「努力」の得点から 4 つの対象方略に分類した.次に JDPI のクラスタ群を独立変数とし,多次元自我同一性尺度の合計得点及び下位概念 4 因子(「自己斉一性・連続性」,「対自的同一性」,「対他的同一性」,「心理社会的同一性」)と自己受容(「生き方」,「性格」,「家庭」,「学校」,「身体能力」,合計得点),学習意欲を従属変数とした一元配置分散分析を行った.その結果,方略的楽観主義群は他の群と比較して高い心理社会的自己同一性を有し,高い自己受容を示した.一方,防衛的悲観主義群は他の群に比べて低い心理社会的自己同一性を有し,自己受容においては真の悲観主義群より高い自己受容を示した.これらの結果から,認知的対処方略の採用傾向とアイデンティティ及び自己受容が関連していることが示唆された.

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