2005 年 7 巻 1 号 p. 7-11
粒子線ガン治療においては,波束を高精度で制御するため,その振る舞いを正確に理解することが必要となる.本研究では,近年原子核物理学の分野で発達してきた反対称化分子動力学法(AMD:Antisymmetrized Molecular Dynamics)を用いて,2フェルミオン系における波束のダイナミクスをシミュレーションによって検討した.具体的には,フェルミオンの代表として原子核の構成要素である核子に焦点を当て,2核子散乱過程における時間発展を調査した.その結果,波束の複雑な振る舞いが観測された.これらの波束は,位相空間においてパウリ禁止領域を避けるように規則的に運動していることがわかった.