1938 年 33 巻 8 号 p. 906-909
一、蛋白質原料の鹽酸加水分解溶液即ち粗製アミノ酸液の臭氣を構成する一臭氣成分としてアセトイン系物質の存在を検索した。
二、アミノ酸溶液にて定性試験を行つてヂアセチルの不存在、アセトイン及び二-三ブチレングリコールの存在を確證した。
三、アミノ酸液の中には勿論共分解操作の如何に依つて多少の相違があると思はれるが約零・零零一五六%零のアセトイン及び約零・零零零七零八%の二-三ブチレングリコールが含有される。
四、諸種の醸造品中に現はる玉アセトイン系物質は其最も低吸なヂアセチールから順次に植物的還元によリアセトイン更に二-三ブチレングリコールと變化して行くものであるか如何かは未だ明確な読明が與へられて居ない、アミノ酸液の如き場合で考ふるとヂアセチールが絶無でアセトインが比較的多量に存在し二-三ブチレングリコールが少量存在することから見て斯る強酸による加水分解に於ては寧ろ炭水化物からブチレングリコールが生成し順次酸化されてアセトインとなリヂアセチルとなるがヂアセチルが比較的不安定な物質である爲めに途に醋酸に變つてしまふのではないかと考へられるが此機作に就いては更に加水分解中の中間物を採つてアセトイン系物質を定量して説明して見たいと思ふ。
五、尚ぼアミノ酸中のアセトインの旋光性其他の諸性質に就ては後報に譲ることとする。