日本釀造協會雜誌
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醤油の化學釀造に關する研究 (X)
化學釀造諸味と酵素作用 (III) アミラーゼ
村上 英也奥山 宏造杉田 誠一
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1950 年 45 巻 11 号 p. 79-83

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抄録

天然釀造と化學釀造の諸味中のアミラーゼについて市販ヂアスターぜと比較し, 作用の最適水素イオン濃度, 最適温度, 及び食鹽による影響を調査した。
(1) 最適水素イオン濃度は天然釀造 (經過6ケ月) pH5.4, 化學釀造 (經過6ケ月) 5.6, 同 (經過7日) 5.2, ヂアスターゼ5.6である。
(2) 何れの場合もアミラーゼの作用速度は, 反應液が酵素の最適水素イオン濃度より酸性に傾くに從つて急激に小くなるが, その度は化學釀造に於て特に著しい。之に對しアルカリ性に傾くに從つてゆるやかに小となるが, その度は天然釀造に於て著しく從つてむしろ速度は化學釀造の方が少し速い。
(3) アミラーゼの最適温度は天然釀造では60~70℃ の高温酸性側に伸びているか, 化學釀造では50~55℃ の低温アルカリ側に伸びている。
(4) アミラーゼの食鹽による影響は天然釀造では非常に少いが, 化學釀造及びヂアスターゼでは大きく, 食鹽濃度10%以上になると本試驗に於ては遂に作用を完了しない。
(5) 一般的に見て天然釀造に於けるアミラーゼでは極めて特異的な性質を持つているのに對し, 同一釀造期間を經過したものでも化學釀造に於けるアミラーゼはヂアスターゼ製品と同様な性質を有しており之等の諸現象は諸味中に存在する保護膠質の作用によるものと考えられるが, 何れにしても醤油釀造をアミラーゼの利用的見地から見れば化學釀造のやり方は甚しく不利であると云い得る。
(6) 之を要するに化學釀造に於けるアミラーゼの作用力は天然釀造に於けるよりも遙かに弱く, その原因として麹料の少い事も考えられるが, むしろ膠質體としてのアミラーゼ自體の性質によると考えるのが正しい。

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