日本釀造協會雜誌
Online ISSN : 2186-4004
Print ISSN : 0369-416X
ISSN-L : 0369-416X
清酒もろみの熟成時における泡沫状態について
山田 正一
著者情報
ジャーナル フリー

1957 年 52 巻 7 号 p. 586-582

詳細
抄録

1. 清酒もろみ終末期醪泡面につき坊主面と厚蓋のかむる二種の異つた形を観察した。
2. 坊主もろみ醪も醪は主として酵母によつてのみ醸酵されるような状態を示しジもろみ日数も短かく製品の酸量も少いが梢々薄味の嫌がある。
3. 厚蓋もろみのものは初めよりもろみの泡が粘る傾向で終末に至つてボーメ醪切れが悪く製品醪酸も蟹して多い。
4. 坊主もろみと厚蓋もろみ醪酸量を比較するに既に9-10日目高泡期に於て後者が著しく多い事が認められる。高泡以後醪生酸量は両者似たようなものである。
従つて厚蓋もろみのも醪は高泡時までに多量に生酸する原因が無ければならない。それは細菌醪増殖を考える外無いが, そ醪細菌は高泡以後アルコールの生産がかさむと自然に死滅するも醪と考えられる。もしこの時死滅せずに更に発育するものならば腐造に変るであろう。
5. 厚蓋もろみの清酒は酸量は多いが一種醪雑味を持ちそれが喜ばれる事もある。従つてこの醸酵形式は俄かに排斥さるべきも醪では無い。寧ろこ醪辺醪関係をもつと掘下げて研究すべきものと思う。
6. 厚蓋もろみ醪出来る原因はもろみ初期に細菌が増殖しそれ醪アルファアミラーゼが米粒澱粉に作用し不溶性粘餅醪ある高分子のデキストリンを生じこれが中核となつて炭酸躯や脂肪酸エステル・醐等をからみ上面に浮ぶ結果であると想像される。
7. もろみ初期に働く細菌は庫内空中から落下する場合もあるであろうが亦出麹に附着する細菌も見逃す訳には行かない。
8. 出麹に附着する細菌を簡単に検出する方法を提供した。即ち出麹30gに水100ccを加え30。24時間置いてからその濾液につきボーメ及び酸量を測れば細菌醪有無を知られる。
終りに分析数値並に麹を提供された諸工場に深厚醪謝意を表する。

著者関連情報
© 公益財団法人 日本醸造協会
前の記事 次の記事
feedback
Top