日本釀造協會雜誌
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酒類検査パネルの訓練について
佐藤 信
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1961 年 56 巻 4 号 p. 389-385

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抄録

神奈川県青年醸友会の会員に対して酒類検査パネルとしての訓練を行なった結果得られた知見について報告した。
即ち, 酢酸臭, 木香, ダイアセチル臭, イソバレリアン酸臭, 火落香, 石棉臭, アセトアルデヒド臭, 炭臭, 紫外線照射による異臭, ゴム臭などの匂いを附与した清酒の試料を製して, これらの特長を記憶させる訓練を行なったところ, 次のような智識が得られた。
1. パネル員によって訓練効果の顕著なものと殆んど効果のあがらないものがある。
これは勿論各人の能力によるものであるが, また訓練期間が十分でなかったせいもあるだろう。しかし全体として訓練効果は著るしい。たとえば訓練を受けない状態で行なった第1回のテストでは専門家パネルと比較してその成績が甚だ劣るが, 一度試料について練習の機会を与えられると速やかに専門家パネルと同様な成績を示した。
このことはパネルを訓練することの重要性を教えるものであって, パネルを構成する際にスクリーニングテストよりも訓練に重点を置くべきであると考える。
2. 酢酸臭のように日常経験している匂の場合には訓練を受けなくても正答率は高いが, イソバレリアン酸臭, ダイアセチル臭, アセトアルデヒド臭などの様に化学者でなければ経験することのない匂の場合には, 訓練を受けない状態では正答は皆無に近い。しかし練習すると速やかに専門家と同程度の正答率を示すようになった。
また, 木香, イソバレリアン酸臭, ダイアセチル臭, 石棉臭, アセトアルデヒドなどは記憶され易く炭臭紫外線による異臭, ゴム臭などは記憶されにくかった。

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