1962 年 57 巻 4 号 p. 317-324
(1) 清酒醸造において原料米中の鉄が清酒および清酒かすにどのように移行するかを検討するため, o-フエナンスロリン法によつて30本のもろみについて原料玄米, 白米, 清酒および清酒かす中の鉄分を定量した。
(2) 原料米の鉄は精米によって1/2程度に減少する。
(3) 白米中の鉄は洗米によって未洗米白米の60%程度あるいはそれ以下に減少する可能性がある。
(4) 清酒かす (酵母菌体を含む) 中の鉄は原料白米中の鉄の70%内外に相当する。
(5) 清酒中の全鉄の量は0.37-3.05ppm, 平均1.16ppmでその約45%は原料白米から, 55%はそれ以外の水その他からの混入鉄と認められる。
(6) 清酒中の直接反応性鉄がその全鉄中に占める割合は平均40%ぐらいであった。終りに, 本試験について多くのご指導とご助言をいただいた道中前鑑定官室長, 奥田現室長, 醸造試験所武藤研究室長, 秋山技官, ならびに試料提供にご協力下さった各酒造場の皆様に深く感謝いたします。