1964 年 59 巻 9 号 p. 811-815
1) 清酒醸造に際し, 原料の利用率向上をはるかに必要と思われる要因を検討する目的で, 蒸米調製から仕込みまでの段階の中から, 浸漬時間, 蒸きょう圧力, 蒸きょう時間, 放冷時間, 汲水歩合および仕込温度を要因としてとりあげ, 酵素液による蒸米溶解速度の比較試験と, 発酵を伴う場合の原料利用率の比較試験を実験室のポット仕込みにより行なった。
2) 酵素液による蒸米溶解速度の比較試験は, 要因として上記の中から浸漬時間, 蒸きょう圧力, 蒸きょう時間ならびに放冷時間を採用し, 4要因2水準のL16 (2) 15型直交配列表により16仕込みを行なった結果, 放冷時間の短かいものが溶解速度速く, 他要因とは比較にならぬ程の大きな有意性を示した。
3) 発酵を伴う試験の場合には, 要因として蒸きょう圧力, 放冷時間, 汲水歩合ならびに仕込温度を採用し, 4要因2水準のL16 (2) 15型直交配列表により16仕込みを行なった結果, 原料利用率向上の目やすとして求めた粕量, 総アルコール量ならびに総原エキス量については, 仕込温度と汲水歩合が影響し, ついで放冷時間もある程度関係のあることが推測できた。なお, 本試験に使用した米種は一般米である関係上, すべての場合にこれらの結果をあてはめることはできぬかも知れぬことを付記しておく。