日本釀造協會雜誌
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味噌の味
吉川 誠次
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1965 年 60 巻 1 号 p. 34-37

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抄録

味噌の味を各種の分類に準じて, 鑑評会出品を通じて化学成分との対応という見方で分析してみた。全体的に甘い味噌の方が辛口の味噌よりも, 味の良い試料に評価のよく一致する味噌が多い。また水分, 食塩, pH, 酸度, I, II, 直糖の6成分の味に対する寄与度を比較するとほとんどの味噌での種類でpHと, 酸度I, IIが大きいことがわかる。甘口の味噌では直糖の多少も味に関係するが, 酵素作用の多寡を示す酸度Iと酸度IIが適度のバランスを持っていることが, やはり味噌の味をよくする最大の要因であることはうたがいない。
現在は味噌の分化の過途期にあり, 多様の醸造法によって出来上る味噌はバラィティーに豊んでいるために, 鑑評会出品試料の分析から, 直ちに味噌の味を推論するのはいささか強引に過ぎる気味もあるが, 結果的に見て。味が良いとされた, 審査員の誰からも悪い点のっけられない数点のいらばれた味噌は味の良い味噌の典型でありて, これの化学成分値に近い値を持っている味噌は味が良くなるための一番の近道であろう。
味のなかには豆味噌の如く, より深い化学分析が必須と思われるものがあるが, 甘味の強い型の味噌では, 実用的にはこの6成分を測定すれば, 味の良否の判定はほとんど可能ではないかと思われる。
味噌の味をさらに深く検討するには, 消費老の評価を調査することや, 勾いとの関係を調べることなどが残されている。審査会のやり方にもまだ検討の余地が多い。
信州系の淡色辛口味噌を中心とする乳酸菌添加, あるいは, 赤色系甘口味噌への酵母菌の添加など, 自動製麹法の導入に伴って, 発酵管理の仕事はいよいよ技術の高度化と研究成果の工場への導入の必要性を高めて来た。
品質の向上, 品質の管理にとって, 官能検査と化学成分の関係を統計的に確認することは焦眉の急となっている。
組織的な研究が最も重要なことを強調して, 味噌の味についての考察の結びとする。
本文の表3以下の資料は味噌技術会の37年度鑑評会のデータによるものである。

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