日本釀造協會雜誌
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清酒清澄用柿渋に関する研究 (第6報)
タンニンと蛋白混濁物質との作用
布川 弥太郎
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1973 年 68 巻 11 号 p. 851-855

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抄録

1) 柿渋, 五倍子タンニンと清酒中の蛋白混濁物質との反応性をタンニン添加による清酒の白濁, 沈澱生成の面から検討した。予め柿渋-ゼラチン処理により混濁物質を除去した清酒に柿渋, 五倍子タンニンを加えても白濁は生じないが, 未処理の清酒に加えた場合は白濁を生ずることを認めた。
2) 清酒に種々量の柿渋, 五倍子タンニンを加えタービディテーの変化をしらべた結果, タンユンの或添加量までは添加量に応じてタービディテーは増加するが, それ以上加えても増加しないか却って, 減少することを知った。また経時的にタービディテーは増加し, タンニンー蛋白混濁物質複合体が時間と共に生長していくことが知られた。
3) タンユンー蛋白混濁物質複合体はやがて大きなフロックとなって沈降するが, 沈降し易い清酒としにくい清酒があり, また柿渋, 五倍子タンニンの添加量によってフロック形成, 沈降の難易があった。一般にはタンニン添加量が少なすぎても多すぎても沈降しにくくなった。柿渋タンニン添加後1日で沈降するような清酒ではタンニン単独でも混濁沈停が出来るものと考えた。
4) 清酒中に過剰のタン論ンが残存する場合は, これを10℃ に冷却することにより白濁を生じた。柿渋, 五倍子タンニン添加, 混濁物質沈停後の清酒中の残留タンニンをしらべた結果, 五倍子タンユン添加のものはかなりの量のタンニンが清酒中に残留することが知られ, 五倍子タンニン単独での混濁物質沈停は無理のように思われた。

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