日本釀造協會雜誌
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Phizopus属の蒸煮大豆上における生育特性
各種糸状菌の大豆発酵食品への利用に関する研究 (第3報)
原山 文徳安平 仁美
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1987 年 82 巻 10 号 p. 697-702

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抄録

テンペ由来と清酒で試験されたPhizopus属6菌株の生理特性を調べ, 蒸煮大豆を用いた堆積培養でAspergillus属と比較検討し, 以下の結果を得た。
1. 供試菌株の生育温度は, 25-40℃ の間で, 中でも30-35℃ が最も旺盛な生育を示した。
2. 生育pHは, 3.5-8.0の広い範囲にあり, pH5.0-6.0で旺盛に生育した。
3. 大豆浸漬時に乳酸を2-4%添加すると蒸煮大豆のpHが5.0以下となり, 発酵大豆の細菌数は低減するが, 酢酸によるその効果は低く, 逆にRhi. 属に対して強い生育阻害を示した。
4. 蒸煮大豆を擂砕して糸状菌を生育させると, 丸大豆に比べ中, 酸性プロテアーゼ活性, NSIが向上した。
5. 発酵大豆のグルコサミン量は, 蒸煮大豆の擂砕の有無による差はなく,Rhi. 属はAsp. 属の6095程度であった。
6. Rhi. 属を蒸煮大豆に生育させると, Asp. 属より蛋白質の水溶性化が進行する傾向にあった。
7. Rhi. 属の産生するプロテアーゼは, 中, 酸性側が主体で, C/N比の影響を大きく受けるAsp. 属とは大きな相違がみられた。
8. 蒸煮大豆に糸状菌を生育させると, 乳化性, 保水性が向上する傾向にあった。
終りに, Rhizopus属菌株の分与並びに御助言を頂いた, 農林水産省食品総合研究所微生物利用第1研究室. 伊藤寛室長に深謝致します。

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