熱傷
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症例
尿道にいたる陰茎凍傷を合併した重症凍傷の治療経験
菅原 隆宮下 采子松田 由佳里吉田 光徳樫村 勉菊池 雄二副島 一孝
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2021 年 47 巻 2 号 p. 72-77

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抄録

 尿道までいたる陰茎凍傷を合併した凍傷の症例を治療する機会を得たので報告する.
 症例は26歳の男性. 冬山登山中に遭難し, 3日後に救助された. 前医救命センターで初療後, 受傷後29日目に凍傷の治療目的に当院に転医した. 当院で初診時に両手指と両足趾, 左鼠径部, 陰茎に黒色壊死を認めた.
 受傷後33日目に壊死組織のデブリードマンを行った. その後, 陰茎腹側に尿道欠損を生じたためデブリードマン後14日目に口腔粘膜移植による尿道再建術を行い, 再建した尿道は陰嚢皮膚よりの皮弁で被覆を行った. 術後経過は良好で, 術後1年半以上が経過した現在も良好な排尿機能を維持しており, 退院後に挙児も得ており勃起機能と妊孕性も温存されている.
 凍傷による尿道損傷は非常にまれな病態であると考えられる. 尿道損傷に対して本例では口腔粘膜移植による再建を行った. 術後良好な結果が得られており, 凍傷による尿道損傷に対して尿道再建術は有用であった.

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© 2021 一般社団法人 日本熱傷学会
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