熱傷
Online ISSN : 2435-1571
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47 巻, 2 号
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原著
  • 大須賀 章倫, 石原 拓磨, 清水 健太郎, 新谷 歩, 小倉 裕司, 上山 昌史
    2021 年 47 巻 2 号 p. 39-47
    発行日: 2021/06/15
    公開日: 2021/06/15
    ジャーナル フリー
     【背景】重症熱傷患者において受傷後に白血球や血小板が低下することはしばしば経験する.熱傷後の凝固異常に関する論文はあるが,白血球減少や血小板減少と予後との関連性に関してはいまだ明らかでない.本研究の目的は受傷後早期の白血球減少と血小板減少が重症熱傷患者の予後予測因子となりうるかを検討することである.
     【方法】本研究は単施設後方視的研究である.2006年1月1日から2015年12月31日までに当院熱傷センターに入院した熱傷面積20%以上の重症熱傷患者を対象とした.患者背景,血球数(赤血球,白血球,血小板および好中球,単球,リンパ球)を受傷から30日後まで診療録から抽出した.血球数が60日死亡に与える影響を検討するために,各血球数と死亡との関連を年齢と熱傷面積を共変量として調整した多変量Cox比例ハザード解析を用いて死亡のハザードとして算出した.
      【結果】280人の患者が対象となった. すべての血球数は受傷後に高値を示したが, その後減少した. 赤血球は徐々に減少し, 受傷後2週間で安定した. 白血球は受傷2日後に急激に減少し, その後増加し安定した. 血小板は白血球よりも急速に減少し, 3日後に最低値に達したのち継続的に増加した. 共変量調整後, 赤血球数が少ないことは1日目 (HR : 0.566, 95%C.I.0.423, 0.759) から5日目まで (HR : 0.524, 95%C.I.0.175, 0.576) 死亡の予測因子であった. 好中球数は危険因子ではなかったが, 3日目のリンパ球数低値 (HR : 0.131, 95%C.I.0.026, 0.646) と10日目の単球数低値 (HR : 0.044, 95%C.I.0.005, 0.396) は危険因子であった. 受傷後3日目 (HR : 0.545, 95%C.I.0.300, 0.981) から30日目までの血小板数低値は常に死亡の予測因子であった.
     【結語】初期の血小板減少とリンパ球減少は60日死亡の独立した危険因子であり, 遷延する血小板減少と単球減少も死亡の独立した危険因子であった. これらの所見は, 重症熱傷後の免疫応答のメカニズムを明らかにする可能性がある.
症例
  • 曽根田 寛幸, 福田 憲翁, 菅 剛史, 矢野 亜希子, 岩上 明憲
    2021 年 47 巻 2 号 p. 48-53
    発行日: 2021/06/15
    公開日: 2021/06/15
    ジャーナル フリー
     分層採皮創の局所管理法については多くの方法があり統一されていない. 採皮直後の創は強い疼痛を伴うことが問題となるが, 一次的なドレッシングとしてハイドロゲル創傷被覆・保護材を用いるとドレッシング交換時の疼痛が少ない. しかしハイドロゲルによる被覆のままでは上皮化が進まないために, 除去してから二次的にドレッシングを行う必要がある.
     当院ではハイドロゲル創傷被覆・保護材除去後の管理について, 親水性ゲル化創傷被覆・保護材を生理食塩水にてゲル化したうえで採皮創を被覆する工夫を行っている. 二次的なドレッシングとして親水性ゲル化創傷被覆・保護材をゲル化し, 高水蒸気透過性ポリウレタンフィルムで被覆する方法にて, 上皮化までの期間および感染の有無について観察した. 上皮化までの期間の遷延はなく, 採皮創の感染は認めなかった. 特に小児の広い採皮創でも, 疼痛の訴えがなくスムーズに上皮化まで導くことができた. 本法は分層採皮創の局所管理として有用と考える.
  • 森内 由季, 迎 伸彦, 吉牟田 浩一郎, 宗 雅, 諸岡 真, 石井 美里, 出光 茉莉江, 松尾 優実
    2021 年 47 巻 2 号 p. 54-59
    発行日: 2021/06/15
    公開日: 2021/06/15
    ジャーナル フリー
     広範囲熱傷に対して自家高倍率メッシュ植皮と自家培養表皮 (ジェイス®) を併用したハイブリット法による治療は, 少ない皮膚で広範囲の創部を短期間で上皮化することができるという利点がある. 一方で, ハイブリット法を行うには事前に創部の真皮様母床形成が必要となる. 母床形成には一般的に2~4週間必要とされており, 母床形成期間中の創部感染が問題となる. 今回, 45%TBSAの広範囲熱傷に対してハイブリット法による治療を計画したが, 人工真皮貼付部が感染したため培養表皮移植予定8日前に人工真皮をすべて除去し再度デブリードマンを行った. そこに単層タイプのインテグラ®を使用することで母床形成期間を1週間程度に短縮してハイブリット法を行い, 二次収縮の少ない良好な瘢痕が得られ有用であった.
  • 菊地 憲明, 矢野 亜希子
    2021 年 47 巻 2 号 p. 60-66
    発行日: 2021/06/15
    公開日: 2021/06/15
    ジャーナル フリー
     1,000ボルト以上の高圧電撃傷による肘関節周囲の肘窩拘縮と肘頭周囲の深達性潰瘍の2例に対して, 逆行性外側上腕皮弁と後橈側側副動脈穿通枝プロペラ皮弁による再建を行い, よい成績が得られたので報告する. 症例1は15歳男子で, 鉄道駅構内の高架線から右足に放電し右手にかけて感電 (20,000ボルト) した. 右下腿および前腕のコンパートメント症候群に対して筋膜切開を要した. 肘窩拘縮に対して受傷11ヵ月目に逆行性外側上腕皮弁で再建を行った. 症例2は78歳男性で, 変電所の点検作業中に架線に左肘が接触して受傷した (3,810ボルト). 肘頭部の手掌大の深達性潰瘍を受傷6週間後に穿通枝プロペラ皮弁で再建した. 逆行性外側上腕皮弁では島状皮弁としたためうっ血がみられたが, 両症例とも全生着した. 皮弁は薄く柔軟で肘関節の可動域獲得に有効であった. 穿通枝プロペラ皮弁の手術時間が短く, 挙上は容易であった.
  • -自家培養表皮(Hybrid法)との比較-
    山本 健登, 田中 真美, 有沢 宏貴, 石川 早紀, 伊藤 悠介, 浅井 晶子, 横尾 和久, 古川 洋志
    2021 年 47 巻 2 号 p. 67-71
    発行日: 2021/06/15
    公開日: 2021/06/15
    ジャーナル フリー
     広範囲熱傷において, 不足する自家皮膚を補う方法として自家分層網状植皮と自家培養表皮を併用するHybrid法や, 自家分層網状植皮の上に人工真皮を貼付するサンドウィッチ法などが報告されてきた. 今回われわれは, 全身熱傷を受傷した症例でサンドウィッチ法にbFGF徐放性人工真皮を用いたので, その結果をHybrid法との比較を交えて報告する.
     受傷部位の多くにHybrid法を施行したが, 一部自家培養表皮が足りなかった部分に人工真皮サンドウィッチ法を施行した. 使用したbFGF徐放性人工真皮にはbFGFスプレー500μgを噴霧し, 浸漬させて加工し貼付した.
     人工真皮サンドウィッチ法を行った部位, Hybrid法を行った部位のいずれも1週間後に生着を認め, 3週間後には上皮化が完了した. 半年後の瘢痕の性状に差異はなかった.
     本植皮法は, Hybrid法を施行した部位と比較して生着率や上皮化に要した時間はほぼ同等であり, 培養に時間を要しない点や医療コストの面からも熱傷の治療に有用である可能性が示唆された.
  • 菅原 隆, 宮下 采子, 松田 由佳里, 吉田 光徳, 樫村 勉, 菊池 雄二, 副島 一孝
    2021 年 47 巻 2 号 p. 72-77
    発行日: 2021/06/15
    公開日: 2021/06/15
    ジャーナル フリー
     尿道までいたる陰茎凍傷を合併した凍傷の症例を治療する機会を得たので報告する.
     症例は26歳の男性. 冬山登山中に遭難し, 3日後に救助された. 前医救命センターで初療後, 受傷後29日目に凍傷の治療目的に当院に転医した. 当院で初診時に両手指と両足趾, 左鼠径部, 陰茎に黒色壊死を認めた.
     受傷後33日目に壊死組織のデブリードマンを行った. その後, 陰茎腹側に尿道欠損を生じたためデブリードマン後14日目に口腔粘膜移植による尿道再建術を行い, 再建した尿道は陰嚢皮膚よりの皮弁で被覆を行った. 術後経過は良好で, 術後1年半以上が経過した現在も良好な排尿機能を維持しており, 退院後に挙児も得ており勃起機能と妊孕性も温存されている.
     凍傷による尿道損傷は非常にまれな病態であると考えられる. 尿道損傷に対して本例では口腔粘膜移植による再建を行った. 術後良好な結果が得られており, 凍傷による尿道損傷に対して尿道再建術は有用であった.
報 告
  • 林 稔, 佐々木 淳一, 池田 弘人, 井上 貴昭, 片平 次郎, 岸邊 美幸, 木村 中, 佐藤 幸男, 田熊 清継, 田中 克己, 松嶋 ...
    2021 年 47 巻 2 号 p. 78-83
    発行日: 2021/06/15
    公開日: 2021/06/15
    ジャーナル フリー
     World Health Organization (以下WHO) では災害医療に対してEmergency Medical Team (以下EMT) という組織を派遣している. 日本では独立行政法人国際協力機構 (Japan International Cooperation Agency; 以下JICA) がその組織を担当しており, 災害派遣要請時に対応している. 2017年10月から始まったWHO EMT Technical Working Group on Burns Careという災害医療における熱傷治療のガイドラインを作成するワーキンググループに世界各国の専門家が招集され, 日本からは日本熱傷学会学術委員会が担当させていただいた. 2020年10月にBurnsにガイドラインがpublishされたが, 日本熱傷学会の一員として共著者に入れていただくことができた.今回,われわれの活動内容について詳細を報告する.
地方会抄録
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