熱傷
Online ISSN : 2435-1571
Print ISSN : 0285-113X
症例
早期除染と高気圧酸素療法が有効であったジクロロメタンによる化学損傷の1例
鈴木 源田口 茂正林 辰彦江川 裕子清田 和也
著者情報
ジャーナル フリー

2021 年 47 巻 3 号 p. 110-113

詳細
抄録

 症例は45歳, 男性. 通気不良の室内でジクロロメタン (dichloromethane; 以下DCM) を主成分とする塗膜剝離剤を使用中に意識消失し救急搬送された. 搬送時, 意識障害に加え, 全熱傷面積7%のⅡ度熱傷を認めた (左肘2%, 腹部2%, 右前腕1%, 左大腿2%). 高濃度酸素投与にもかかわらず高一酸化炭素血症を認めたことより, DCMによる化学熱傷を伴う急性中毒と診断した. ただちに除染を行い, 高濃度酸素投与を行ったが, 入院後も血中カルボキシヘモグロビン (CO-Hb) 濃度の上昇を認め, 意識障害が遷延した. 受傷翌日より高気圧酸素療法を開始したところCO-Hb濃度はすみやかに低下し, 意識障害は改善した. 熱傷創部は深達化せず, 外用薬のみで受傷後3週間で完全に治癒した. DCMはその局所刺激作用や脱脂作用による化学損傷や, その代謝により産生される一酸化炭素による意識障害を引き起こすことがある. 本症例においては早期除染と高気圧酸素療法が有用であったと考えられた.

著者関連情報
© 2021 一般社団法人 日本熱傷学会
前の記事 次の記事
feedback
Top