抄録
【はじめに】広範囲の重症熱傷患者例においては, 救命のためにしばしば手指や手の切断を余儀なくされる.しかし若年患者では救命後の社会復帰をより質の高いものにするために, 慢性期において手指の機能回復を検討せねばならない.手指が全廃にいたった場合の再建治療における概念・具体的な術式について, 当院の症例を提示し報告する.
【症例】初診時より当院で診療を行った若年齢の重症熱傷患者の2例について報告する.
1例目は2歳の女児で, 受傷後2年で第1指間の形成, 母指分離術を行った.2例目は23歳の女性で, 受傷後2年で有茎腹壁皮弁と遊離腸骨移植により母指を再建した.
【考察】手指全廃の熱傷患者に対する機能再建の報告は国内外でほとんどない.そのためにわれわれは重度の手指外傷, 重度の先天性手指欠損に準じたアプローチ法を検討した.Useful handとして, 母指といずれかの対立指, 対立面とのピンチ機能の再建を優先する.手指が全廃するような熱傷症例でも手内筋機能は温存されていることが多く, これらの残存機能を有効な機能にいかにつなげていくかが課題となる.
【まとめ】重度全身熱傷後の手指欠損手の機能再建について自院なりのアプローチ法を報告した.広範囲熱傷であっても特殊部位として熱傷急性期からの適切な管理が必要であり, 慢性期に手指の機能が全廃であったとしても, 限られたgraftのなかで個々の症例に応じて温存された手内在筋機能を利用した再建を検討すべきである.