熱傷
Online ISSN : 2435-1571
Print ISSN : 0285-113X
症例
広範囲熱傷の治癒後に再度熱傷を受傷した1例
飯田 莉奈中野 基田中 克己
著者情報
ジャーナル フリー

2022 年 48 巻 1 号 p. 21-26

詳細
抄録
 熱傷で植皮された患者は再度受傷しないよう注意していると思われ, 植皮部が熱傷を負うことはまれである.今回, 広範囲熱傷の治癒後同部位に熱傷を受傷した症例を経験し, 分層植皮された部位が熱傷創になると上皮化が遷延するという知見を得た.
 症例は51歳, 女性.両上肢,胸背部から両大腿に60%TBSA, 深達性Ⅱ度を中心とした熱傷を受傷し, 計5回植皮した.5年半後, 熱湯を臀部から右下腿に浴び受傷した.創面の状態から保存的治療で上皮化すると判断したが遷延し, 第36病日植皮した.
 浅達性Ⅱ度熱傷や薄い採皮部は, 汗管や毛嚢など皮膚付属器に温存されたケラチノサイトが増殖し早期に表皮が新生するが, 本例は初回の熱傷が深部に及び手術時ほとんど真皮が残らず, patch skin graftした部に皮膚付属器がほとんどなかったため, 比較的浅いと思われる熱傷でも上皮化が遷延したと考える.分層植皮された部位の熱傷治療は, 初期の深度判定にとらわれず再植皮の選択を念頭に置くべきである.
著者関連情報
© 2022 一般社団法人 日本熱傷学会
前の記事 次の記事
feedback
Top