熱傷
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症例
初診時に虐待を疑った乳幼児熱傷5例の検討
塩沢 啓西村 剛三杉原 佳奈
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2022 年 48 巻 3 号 p. 95-101

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抄録

 児童相談所への虐待相談数は著明に増加しており, 児童虐待は大きな社会問題の1つである. そこで, 当院で初診時に虐待を疑った乳幼児熱傷5例を検討した. 熱傷面積は3~23.5%TBSAであり, 全例高温液体熱傷であった. 親から聴取した現病歴の信頼性が乏しいことが特徴的であった. 臨床においては, 明らかな児童虐待を示唆する症例ばかりでなくグレーゾーンの症例が多い. しかし具体的な臨床指標が存在せず, また虐待の判断には評価者の主観が影響する. さらに虐待の通報が患児の親との信頼関係の構築に支障をきたす可能性があり通報に躊躇する場合が多い. 乳幼児熱傷においては創部の評価のみでなく, 家族から聴取した病歴の真偽や局所初見との矛盾, 家族の対応など, 多岐にわたる観察が必要で, 疑った際は迅速に通報し, 局所処置, 虐待対応がともに十分対応できるような虐待対応チームの整備を強化すべきと思われた.

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