熱傷
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症例
家族と積極的治療の合意形成にいたらず,治療撤退とせざるをえなかった顔面・四肢熱傷の1例
菅谷 一樹鈴木 光子全田 吏栄鈴木 剛岩渕 雅洋小野寺 誠伊関 憲
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2023 年 49 巻 2 号 p. 67-71

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抄録

 家族と積極的治療の合意形成にいたらず, 本人の治療希望に添えない転帰を辿ることとなった熱傷の症例を経験した. 症例は86歳の男性, 火炎熱傷により搬送された. 来院時, 意識レベルは清明で, 顔面と両上下肢に%total body surface area 16, prognostic burn index 97の熱傷を認めた. 入院時, 本人や家族は積極的治療を希望された. 第2病日に原因不明の心肺停止に陥ったが蘇生され, 以後は本人との意思疎通は取れなくなった. 医学的に救命は可能と判断するが, 機能予後が望めない旨を家族に病状説明したところ, 介護に対する経済的問題から積極的治療を拒否された. 家族に対する説得は叶わず, 第12病日にbest supportive careの方針とした. その後, 手術介入は一切行わず, 緩やかに治療強度を縮小していく方針で家族と合意し, 第44病日に死亡した. 近年公開された熱傷診療ガイドライン (改訂第3版) に「リエゾン」の項目が盛り込まれ, 臨床現場での活用が期待される一方で, 院内の多職種・多機関による臨床倫理の熟考が必要と考えられた.

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© 2023 一般社団法人 日本熱傷学会
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