2024 年 50 巻 1 号 p. 18-23
小児広範囲熱傷ではtoxic shock syndromeや敗血症を合併し容易に重篤化することがあり, 長期保存的加療は成人よりリスクが高いと考えられる.
また, 早期の閉創のために自家分層植皮が行われることが多いが, 小児では成長・発育という因子が重なり, 受傷後幾度と機能改善を目的とした手術が必要となることがあり, 創の縮小化や創閉鎖のための治療計画に難渋する.
今回われわれは, 1歳児の広範囲熱傷に対し分層植皮を用いず, 人工真皮貼付による真皮様組織の母床構築と自家培養表皮移植術のみで熱傷治療を行い, 閉創に成功した症例を経験した.
2歳未満の小児に対する自家培養表皮移植の有用性の検討はなされていないが, 今回の経験から小児広範囲熱傷治療においても救命という点で自家培養表皮移植は有用である可能性が示唆された.