熱傷
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原著
  • 守永 広征, 海田 賢彦, 田中 佑也, 吉川 慧, 山口 芳裕
    2024 年 50 巻 1 号 p. 1-5
    発行日: 2024/03/15
    公開日: 2024/03/15
    ジャーナル 認証あり

     【背景】熱傷患者の予後推定指数として海外においてはBaux score, revised Baux score, abbreviated burn severity index (ABSI), Belgian outcome in burn injury (BOBI) などが用いられ, 本邦ではprognostic burn index (PBI) が最もよく用いられている. 近年, 本邦の症例についても気道熱傷を指数計算に含むrevised Baux scoreの有用性が報告されている. 一方, PBIの算定には気道熱傷が考慮されておらず, PBIに気道熱傷の因子を加えた新たな熱傷予後指数とその有用性について検討した.
     【方法】2008年から15年間に当院に入院した熱傷患者 (気道熱傷単独症例, 来院時心肺停止症例をのぞく) を対象とし後方視的に検討した.
     【結果】対象患者252人. その中央値は年齢54歳, 男性の比率は58%, 総熱傷面積15%, Ⅱ度熱傷面積9%, Ⅲ度熱傷面積0%, 気道熱傷を合併した症例は104例 (41%), PBI 73, 死亡例は42例 (17%) であった.
     生存群と死亡群の比較では年齢, 総熱傷面積, Ⅱ度熱傷面積, Ⅲ度熱傷面積, 気道熱傷合併有無について2群間で有意差を認めた. 多変量解析では年齢, burn index (BI), 気道熱傷合併有無が独立して予後に影響を及ぼしていた. 気道熱傷合併有無はBIの19.4倍相当の寄与度であり, 新たな熱傷予後指数 (new PBI) として, 気道熱傷がある場合には従来のPBIに20を加えた値をnew PBIと定義した. 熱傷予後指数のarea under curve (AUC) 値は, BI 0.891, PBI 0.919, Baux score 0.923, revised Baux score 0.941, ABSI 0.931, BOBI 0.912, new PBI 0.955であった. New PBIのカットオフ値を100とすると感度100%, 特異度85.0%であった.
     【結論】熱傷患者の予後推定因子として, new PBIは有用である.

症例
  • 山下 賢人, 青木 昂平, 横田 歩香, 山口 真依, 伊藤 謹民, 島田 和樹, 小宮 貴子, 松村 一
    2024 年 50 巻 1 号 p. 6-11
    発行日: 2024/03/15
    公開日: 2024/03/15
    ジャーナル 認証あり

     【はじめに】NexoBrid®を用いた最小限のデブリードマンとRECELL®システムを併用することで, 低侵襲で整容性に優れた治療が期待される. 今回, 乳幼児足部熱傷の2症例にこれらを併用したところ, 早期にすべての創の上皮化が得られ, 整容的にも良好な結果であった. 詳細を報告するとともに管理上の問題点を考察する.
     【症例1】10ヵ月, 男児. 左足部に浅達性・深達性Ⅱ度熱傷創とⅢ度熱傷創の混在を認めた. 受傷後8日目に全身麻酔下でNexoBrid®を用いてデブリードマンを行ったが, 術後の安静維持に難渋した. 受傷後11日目に追加のデブリードマンとRECELL®を施行し, その後10日目ですべての創の上皮化が得られた.
     【症例2】1歳, 男児. 左足部に浅達性・深達性Ⅱ度熱傷創を認めた. 受傷後6日目に全身麻酔下でNexoBrid®を用いてデブリードマンを行い, 翌日ICUにてRECELL®を施行した. 術後8日ですべての創の上皮化が得られた.
     【考察】NexoBrid®とRECELL®とを併用することで早期の上皮化を得たが, 1症例目では塗布後の安静保持に難渋した. 今後, 乳幼児のNexoBrid®使用症例における鎮静・鎮痛のよりよい方法を検討する必要がある.

  • 南里 健太, 藤原 修, 仲本 寛, 櫻井 裕之
    2024 年 50 巻 1 号 p. 12-17
    発行日: 2024/03/15
    公開日: 2024/03/15
    ジャーナル 認証あり

     症例は26歳, 男性. うつ病・解離性障害の診断にて内服加療中であった. 煙草を吸った際, ガスに引火し受傷, 当院に搬送となった. 第1病日に39度台の発熱・炎症反応の上昇を認めたが, 創部感染を疑わず待機的手術の方針とした. 数日間の抗菌薬治療を行ったが軽快せず, 第7病日に手術を施行したが, 術後も解熱しなかった. 第17病日から誘引なく解熱し, その後発熱なく経過した. 熱源については不明であったが, 後ろ向きに考察したところ, 常用していた向精神薬が入院後中止されていたことから向精神薬中断による悪性症候群が疑われた. 熱傷治療において, 創部感染による発熱には特に注意すべきであるが, 重症熱傷患者の発熱の原因は多岐にわたるため, 創部感染に限らずあらゆる可能性を考えるべきである. また, 熱傷治療は複数の診療科が同時にかかわることが多いため, 密な情報共有を行うことが改めて重要である.

  • 増田 興我, 上田 敬博, 生越 智文, 松尾 紀子, 大河原 悠介, 松田 健一, 山本 章裕, 一番ケ瀬 博, 梅田 竜之介, 亀岡 聖 ...
    2024 年 50 巻 1 号 p. 18-23
    発行日: 2024/03/15
    公開日: 2024/03/15
    ジャーナル 認証あり

     小児広範囲熱傷ではtoxic shock syndromeや敗血症を合併し容易に重篤化することがあり, 長期保存的加療は成人よりリスクが高いと考えられる.
     また, 早期の閉創のために自家分層植皮が行われることが多いが, 小児では成長・発育という因子が重なり, 受傷後幾度と機能改善を目的とした手術が必要となることがあり, 創の縮小化や創閉鎖のための治療計画に難渋する.
     今回われわれは, 1歳児の広範囲熱傷に対し分層植皮を用いず, 人工真皮貼付による真皮様組織の母床構築と自家培養表皮移植術のみで熱傷治療を行い, 閉創に成功した症例を経験した.
     2歳未満の小児に対する自家培養表皮移植の有用性の検討はなされていないが, 今回の経験から小児広範囲熱傷治療においても救命という点で自家培養表皮移植は有用である可能性が示唆された.

  • 西浦 嵩弥, 町山 彩美, 野間 貴之, 小川 新史, 山田 知輝, 水島 靖明
    2024 年 50 巻 1 号 p. 24-28
    発行日: 2024/03/15
    公開日: 2024/03/15
    ジャーナル 認証あり

     熱傷の創閉鎖目的に植皮片の十分な生着を得るためには良好な母床形成が必要となる. 自家培養表皮移植の際も同様に母床形成は重要である. 当院では広範囲熱傷患者に対して自家培養表皮 (ジェイス®) による植皮を行う際に, 母床形成として局所陰圧閉鎖療法を用いている. 当院では2015年1月から2022年12月の間に6例経験し, すべての症例で80%以上の高い生着率を得ることができた. 自家培養表皮移植の母床形成に局所閉鎖陰圧療法は有用である可能性がある.

看護
  • 佐々木 洋哉, 村中 沙織, 牧野 夏子
    2024 年 50 巻 1 号 p. 29-38
    発行日: 2024/03/15
    公開日: 2024/03/15
    ジャーナル 認証あり

     重症熱傷患者は病期と治療の場の変化を経験しながら長期の治療過程を経るため, 看護師による移行ケアは重要である. 本研究は, 重症熱傷患者が高度救命救急センター病棟 (以下, 救急病棟) から形成外科病棟に転棟する際の移行ケアにおける看護師の認識を明らかにすることを目的とした. 2022年8月~11月, A特定機能病院の救急病棟および形成外科病棟に勤務するそれぞれの看護師を対象に, 基本属性と重症熱傷患者に対する移行ケアの認識について半構造化面接を行った. 分析は質的記述的分析を行った.
     分析の結果, 救急病棟研究協力者5名, 形成外科病棟研究協力者5名であった. 救急看護師からは【回復過程や転棟先環境を考慮したセルフケア獲得への援助】【転棟による環境変化がもたらすボディイメージ変容の懸念と受容過程の共有】【急性期から行う退院支援情報の集約と転棟に向けた情報伝達の準備に関する認識】などの6カテゴリ, 形成看護師からは【創傷治癒と機能回復へのケア継続を考慮した情報把握に対する認識】【救急医療・看護を経た看護単位の変化によるケア継続と患者対応への懸念】【病期の変化に伴う病棟転棟に対するオリエンテーションの認識】などの6カテゴリが生成された.
     救急看護師は転棟後のケアの継続や将来の退院支援を考慮した情報共有を移行ケアとして認識しており, 形成看護師は創傷治癒と機能回復に向けたケアの継続や治癒過程の共有を主とした情報共有を移行ケアとして認識していた. 救急看護師と形成看護師の移行ケアに関する認識において, 退院・社会復帰に向けた認識は一致したが, 身体機能の回復の認識や双情報ニーズが不一致だった. 移行ケア促進には, 病棟間における双方看護師の情報ニーズの共有と病棟移行時のオリエンテーション充実の必要性が示唆された.

地方会抄録
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