抄録
ウラシル2量体の励起状態に対して、時間依存密度汎関数(TDDFT)法、一電子励起配置間相互作用(CIS)法、一電子励起配置間相互作用に摂動によって動的相関を加えたCIS(D)法、運動方程式結合クラスター法(EOM-CCSD)法により計算を行い、励起エネルギーの分子間距離による変化について詳細な解析を行った。ab initio法であるCIS、CIS(D)、EOMCCSDでは、同種分子二量体の励起状態の特徴である、電荷移動励起の遠距離における1/Rの減衰、局所励起状態での双極子双極子相互作用で近似される電子カップリングによる状態の分裂、という振舞いをすべて示すが、TDDFTでは用いる交換相関汎関数の長距離間相互作用の記述が正しくないため、二量体の励起状態をうまく記述できないことがわかった。また電子相関は2量体の励起状態、とくに電荷移動励起に対して極めて重要な役割をし、電子相関が考慮されないCISでは3 eV程度もCIS(D)やEOM-CCSDに対して電荷移動励起状態を高く算出してしまうことがわかった。