2008 年 9 巻 p. 47-54
フラグメント分子軌道(FMO)法は、生体高分子をフラグメントに分割することにより計算時間を大幅に短縮し、タンパク質やDNAなどの巨大分子系全体を量子論的に扱う計算方法として近年注目を集めている。本研究ではその中の1手法である多層FMO(MLFMO)を用いて、ホタルルシフェラーゼの励起状態計算を行った。計算に用いた構造は、野生型(緑色に発光)と橙色、赤色に発光する変異体の計4つである。発光体オキシルシフェリンと活性中心を含む比較的小規模な系で計算を行い、その結果4つの構造に対する発光エネルギーを実験値と相関して再現することに成功した。タンパク質の全体構造においても励起状態計算を行い、実験値と計算値の差を比較したところ、4つの構造において最大でも0.27eVの差と、実験値を定量的に再現することにも成功した。本報告ではその詳細と、発光色制御における周辺環境場の重要性について述べる。