東アジアで発祥し発展してきた鍼治療は欧米先進国にも普及しており,今や国際化していると言ってよい.鍼治療の臨床評価に関する政策・研究助成金・論文発表の面から見れば,むしろ欧米諸国のほうが日本より進んでいる.欧米では,医療全体に普及している Evidence-Based Medicine (EBM) の概念に則って鍼の臨床評価が推進され,東アジア諸国は近年その必要性を認識して追随してきているというのが現状である.近年ではランダム化比較試験にもとづいて,有効性のエビデンスが有望とされる症状や疾患が増えつつある.また,多数の患者を対象とした前向き調査にもとづいて,標準的な鍼治療で重篤な有害事象が起こることはまれであることが確認されている.いわゆる「EBM 的」な手法を用いて検証されることにより,鍼灸の研究には新たな展開が見られたが,一方で鍼灸独自の「システム」の臨床的意義については軽視される傾向がある.