2021 年 12 巻 1 号 p. 3-9
発達期の脳内において,様々な外的因子の影響を受けつつも,軸索の伸長やシナプスの形成といった過程が調和を保ちながら機能的な神経回路網が形成されることが,健やかなこころの育ちの基盤となる.我々の研究室では基礎的な回路形成の研究と共に,(1)巧緻運動に関わる回路の発達,(2)シナプス部における情報伝達に関わる仕組み,(3)母親のストレスと子どもの脳発達,という臨床とも関連の深い3つのテーマに取り組んでいる.本稿ではそれぞれの概略を冒頭で短く紹介し,残りの紙面で(1)について最近発表した論文の内容を詳しく紹介する.