社交不安症(Social anxiety disorder; SAD)は,社交場面において他者からの評価を恐れる特徴があり,自然には治癒しにくく慢性的な経過をたどりやすい精神疾患である.小児期・青年期では,行動抑制気質がSADの発症リスクとして挙げられており,SADでは扁桃体の体積が小さいことに加えて,恐怖を予測する場面において内側前頭前皮質の賦活の程度が小さいことが報告されている.さらに,幼少期に行動抑制気質があることにより,成人期において背側帯状皮質の体積が小さくなるという長期的な影響についても検討されている.成人期では,扁桃体などの辺縁系と前頭前皮質との情動処理領域に関して研究されてきた.しかし,近年は視覚領域など広範囲にわたる関連性について報告されている.SADの治療では認知行動療法が推奨されているが,病態生理機序について十分な理解があるとはいえない.本稿では,小児・青年期と成人におけるSADの脳画像研究について概説した.