2023 年 14 巻 1 号 p. 26-32
近年,不登校生徒において,起床困難を中心とした睡眠の問題が目立つことが,注目されるようになっている.不登校児童において最も主要な睡眠の問題は,睡眠・覚醒相後退障害を中心とした,概日リズム障害である.不登校と起床困難が増加する思春期には,生理的な変化に加え,社会的な活動の変化からも,深夜までの覚醒を助長されることが多い.結果として平日の睡眠不足に陥り,是正がなされないと,睡眠・覚醒相後退障害へ移行すると考えられる.また,不登校に至るには様々な要因があるが,不登校に至った生徒は,その生活スタイルから,睡眠・覚醒相後退障害に陥りやすく,しばしば起立性調節障害を伴う.また,神経発達症の背景があることも少なくなく,睡眠の治療にも影響を及ぼす.社会全体が睡眠の問題に対して予防的な観点をもって正しい睡眠リテラシーを獲得すること,不登校の治療には,睡眠の問題への視点を持って携わることが重要と考えられる.