Journal of Computer Chemistry, Japan
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DFT法による塩化鉄(III)錯体の鉄-配位子間相互作用の解析
陳 奕廷陳 皇州福田 光完
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論文ID: 2016-0049

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抄録

八面体構造から四面体構造まで塩素数に応じて構造が変化する塩化鉄(III)錯体に対してDFT法を用いて理論計算を行った.使用した汎関数はBHandHLYP,wB97XD,CAM-B3LYP,LC-wPBEの4種である.基底関数には6-311+G(d,p)あるいは6-311+G(3df,2pd)を用い,PCM法による水媒体中で計算を行った.4種の汎関数を用いたDFT法は概ね錯体構造をよく再現した.2原子の塩素が配位した八面体型[Fe(III)Cl2(H2O)4]+cis型とtrans型の安定性,及び3原子の塩素が配位した三方両錐型の[Fe(III)Cl3(H2O)2]と四面体型の[Fe(III)Cl3(H2O)] の安定性をエネルギー的に比較した.振動計算から得られる配位水分子の伸縮振動の波数の変化を[Fe(III)(H2O)6]3+から[Fe(III)Cl3(H2O)]まで調査したところ,八面体型では水分子の減少とともに伸縮振動は高波数側へシフトし,フリーの単独水分子の伸縮振動に近づく.八面体型では塩素原子の鉄への配位は鉄の極性を低下させ,その結果として水分子との相互作用を弱めると考えられる.しかし,三方両錐型([Fe(III)Cl3(H2O)2])から四面体型([Fe(III)Cl3(H2O)])になるにつれ再び伸縮振動はやや低波数側へシフトした.配位する塩素原子数が同じ3であっても,水分子数が少ないほど鉄との相互作用は強められる.鉄-酸素間距離についても同じ傾向を示した.

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