2023 年 11 巻 p. 66-78
日本の臨床倫理コンサルテーションにおいて,治療の差し控えや中止,患者の意思決定支援等,関係者の不安や対立の解消を支援するために,適切なアドバイスを行う活動が行われている。本研究では上級臨床倫理認定士を対象に半構成的インタビューを行い,コンピテンシーを明らかにすることを目的とした。対象者は20医療機関38名。テーマ分析を用い,逐語録から49のサブカテゴリ,11のカテゴリ,4のテーマが抽出された。臨床倫理認定士は,自身の視点にとらわれず相談者の不安に対して傾聴し,問題の本質を見抜き,倫理的推論を構築する。カンファレンスにより参加者の意見交換を活発にし,解決のための具体的な方策を導き出すため,話し合いのプロセスそのものを支援する。何より,個人としての能力を発揮するためには,倫理コンサルチーム内での役割分担と連携を図ることが重要である。多種多様なコンピテンシーを用いて倫理問題への支援をしていることが,語りから導き出された。