2024 年 12 巻 p. 28-40
医師,看護師,医療ソーシャルワーカー(以下,MSW),事務職員等の職種によって価値観が異なるといわれているが,その同異が倫理問題解決の場面で調べられたことはない。そこで,A県の5つの病院において共通2模擬事例を職種別に議論し,その合意内容を質的に分析し比較検討した。その結果,患者の意思・推定意思を尊重することは各職種で共通していたが,2事例に共通してみられた職種特有の傾向として,医師は,「病院が決めたルールや一般的ルールの適用」を重視,看護師は「患者の尊厳」や「医療者―患者・家族関係の構築」を重視し,MSWは「患者の尊厳」を大切にしながら「患者の人生を考慮して全人的かかわりを重視」する姿勢がうかがえた。このような価値観の違いは,それぞれの職務の違いによるところが大きいと考えられるが,倫理コンサルテーションでこれらの多様な価値観をどのように統合して合意内容に集約すべきなのかは今後の検討課題である。