臨床倫理
Online ISSN : 2435-0621
Print ISSN : 2187-6134
実践・事例報告
重症遷延性神経性やせ症患者の救命治療と看取りの境目で看護師が抱いた倫理的葛藤
―転帰が異なった2症例の振り返りから―
齋藤 朝子, 簡野 宗明
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2026 年 14 巻 p. 52-61

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抄録

 神経性やせ症(anorexia nervosa;AN)のなかでも,とくに重度で慢性化した病態は,重症遷延性神経性やせ症(severe and enduring anorexia nervosa;SEAN)と呼ばれる。SEAN患者は,極度の衰弱により救急搬送を契機に強制治療が行われることがあり,その適用には法的および倫理的な課題が生じる。本研究では,救命可能性が低い状況から異なる転帰を迎えた2名のSEAN症例を通じて,看護師が直面した倫理的葛藤を倫理原則に基づいて分析した。その結果,①救命治療か緩和ケアかをめぐる葛藤,②患者と家族の不同意による不十分な治療の葛藤,③治療抵抗性と医療体制における葛藤の3つの主要なテーマが明らかとなった。これらの葛藤はSEAN治療における不確かなエビデンスや価値観の対立,医療体制の未充足によるものと考えられた。また,看護師が倫理的葛藤を保持し,批判的内省を通じて患者・家族・医療者間の価値観の対立を調整することにより,協働的意思決定を推進する役割を担うことができる可能性が示唆された。

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