2026 年 14 巻 p. 62-76
本研究の目的は,医療機関における代理意思決定とその手続きに関する課題を日本臨床倫理学会ワーキンググループの議論から明らかにすることである。ワーキンググループ構成員を対象に,4つの仮想事例を用いたグループディスカッションを行い,逐語録を用いて質的に分析した。その結果,入院時保証人の条件や役割,治療方針の話し合いに同席する人,同意書への署名の扱いなど,代理意思決定をめぐる実務にいくつかのばらつきが認められた。とくに緊急・準緊急手術で患者に意思決定能力がない場合には,誰を代理意思決定者とみなすか,署名を必須とするかについて見解が分かれていた。代理意思決定者には法的続柄よりも本人の価値観や生活への深い理解が求められる一方,その選定や家族内調整が倫理的ジレンマとなることが示され,用語と役割の整理とともに,緊急性や治療目標に応じた,柔軟で透明性の高い意思決定プロセスの整備が必要と考えられた。