2021 年 9 巻 p. 48-56
現在,生殖医療の臨床においてカウンセリングは必須とされていないが,生殖医療に関わる当事者(医療者,不妊治療経験者,配偶子提供により生まれた出生児)を対象とするインタビュー調査を行ったところ,DC(donor conception)や性機能に障害を抱えるケースにリプロダクティブ・ライツが侵害され得るケースが散見された。そして,そのようなケースでは,養育段階における出生児の福祉や利益が侵害されるという倫理的問題が生じる懸念がある。このような問題の背景には,患者が挙児への強いプレッシャーを感じていたり,「子を得られれば幸せになれる」と妄信し,治療の先に続く育児や夫婦関係を見据えた長期的視野を失っていることが挙げられる。
このような倫理的問題を解決するために,患者自身が抱えている困難に向き合った上で生殖に対する自己決定権を行使できるよう,不妊治療の担当医がメンタルヘルスケアの専門職と連携し,患者の支援をおこなう必要性があることを提起した。