Journal of Chemical Software
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分子の構造活性相関解析のためのニューラルネットワークシミュレータ: Neco(NEural network simulator for structure-activity COrrelation of molecules)の開発(4)
― ペリラルチン類の甘味・苦味分類 ―
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2000 年 6 巻 3 号 p. 115-126

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抄録

分子構造によって甘味や苦みの性質を示す22種類のペリラルチン類の分類を3層のパーセプトロン型ニューラルネットをもちいて行った。入力パラメータとして、疎水性パラメータLogPと分子構造STERIMOLパラメータ5種のパラメータを用いると、非線形分類法の一つである3層のパーセプトロン型ニューラルネットで誤認識が全く無しに正しい分類学習が可能となる。入力層ニューロン数と出力層ニューロン数をそれぞれ、6と2としたとき、再構築学習法によって最小化された中間層ニューロン数は1となり、最小の中間層ニューロン数を持つ。逆に中間層ニューロン数を1と固定し、入力パラメータの数を最小化すると、LogPと分子の幅を示すSTERIMOLパラメータWrの合計2つだけで誤認識のない分類が可能であることがわかった。 STERIMOLパラメータの代わりに、分子構造の共通な骨格上の6原子の形式電荷とそれぞれの分子の最高占有軌道(HOMO)と最低非占有軌道(LUMO)エネルギーおよび両者の差(HOMO-LUMO Gap)を選択し、それらとLogPを入力パラメータとして用いた再構築学習の結果も中間層ニューロン数が1となった。この場合、甘味・苦味の分類には、LogPに加え、ペリラルチン類の6員環の2重結合に関わる炭素原子の電子状態が重要である。これはWrが重要であることに対応している。またLUMOエネルギーが重要であることがわかった。これは、甘味の発現には電子親和性の反応が関わっていることを示唆している。 分子軌道計算から得られる情報のみ、すなわち形式電荷とHOMO, LUMOエネルギーおよびHOMO-LUMO Gapを入力パラメータとした場合、中間層ニューロンの数は3となった。

© 2000 化学ソフトウェア学会
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