2023 年 38 巻 p. 56-61
全国の農業用ため池において,老朽化や耐震性不足等により,集中的かつ計画的に整備を進めることが喫緊の課題となっている.ため池堤体改修は遮水性土質材料を用いることが主流であるが,代替としてベントナイト系遮水シートを用いた工法も増加傾向にある.しかしながら,後者の工法に関する設計手法が確立されていない.本論文では,ため池堤体の安定性検討手法を確立するため,ベントナイト系遮水シート上流側覆土の安定性について,既往研究で提案された計算方法と従来の方法を組み合わせた手法を提案するとともに,実在ため池を対象に当設計手法を検証した.その結果,計算方法によって水位や水平震度が安全率に及ぼす影響が異なることが明らかとなり,計算方法を組み合わせることの妥当性が示された.