脳神経外科ジャーナル
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脳底動脈とその穿通枝の微小解剖 : Basilar trunk aneurysmの外科治療のための検討,正常脳の分析より
佐伯 直勝福田 和正山浦 晶
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1992 年 1 巻 4 号 p. 355-361

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抄録
Basilar trunk aneurysmの手術に必要な脳底動脈穿通枝の微小外科解剖を明らかにするため,25個の正常cadaver brainを顕微鏡下に観察し,主にその分布を検討した.脳底動脈には,平均20.4本の穿通枝が認められた.傍正中枝はほぼ均等に分布していたが,回旋枝の数は前下小脳動脈と上小脳動脈の発達に影響を受けており,術前の血管写で両小脳動脈の未発達例では回旋枝の血流に依存度が高いと予想され,その温存には特に注意を要する.有窓形成は8%の例でみられ,同部位より穿通枝は通常のごとく分岐していた.穿通枝の温存のためには,有窓形成部といえども安易なtrappingは避けなければならない.特殊な脳動脈瘤の治療には,脳底動脈のtrapping術や結紮術を余儀なくされる.その成否の鍵は,少なくとも一側の後交通動脈の発達が十分であること以外に,小脳への血流を保ち相互の側副血行路を期待する意味から,前下小脳動脈,上小脳動脈を開存しておくこと,さらに修正申枝の損傷を避けることである.穿通枝のdomeからの剥離,trappingの距離を最小限にする工夫が大切である.
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© 1992 日本脳神経外科コングレス

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