抄録
右前頭葉内に発生した巨大脳石症を経験したので報告する.症例は49歳, 男性で, 痙攣発作後の意識混濁を主訴に入院となった.40年間以上に及ぶ痙攣発作の既往と軽度精神発達遅滞があり, 頭部CTおよびMRIにて右前頭葉内に増強効果を伴わない巨大な石灰化病変が観察された.ヘリカル3D-CTおよび脳血管撮影検査において病変部はavascular areaとして描出された.右前頭側頭頭頂開頭にて腫瘤全摘術を施行した.患者の術後経過は良好で, 現在までのところ抗痙攣剤内服により発作は抑制されている.病理学的に病変は一部に骨化生を伴う石灰化外膜と壊死性無構造なエオジン好性物質が充満する内腔から構成されており, その非特異的所見よりidiopathic brain stoneと診断せざるを得なかった.直径5cm を超える巨大なidiopathic brain stoneは稀であり, 文献的考察を加えて報告した.