抄録
頸椎変性疾患に対して行われた前方・後方合併手術(combined approach)につき検討した.過去18年間において,10症例の頸椎椎間板ヘルニア例,11症例の頸椎後縦靭帯骨化症例,13症例の頸部脊椎症例の計34症例に対して,combined approachが採用された.これらの症例に対してcombined approachが行われた理由としては,脊髄圧迫が前方・後方の両方向からある場合,圧迫因子は後方要素であるが,著明な脊柱不安定性を伴うもの,後縦靭帯骨化症で著明な骨化巣がみられるもの,前方に移植され,自家骨の骨折や逸脱をより強固に防止するため,などであった.combined approachに際して前方・後方法のいずれを先に行うべきか,同時期に行うべきか否かなどについては,いまだ明確な見解はみられていない.また固定法の種類,併用する内固定器具の是非についても今後の検討を要する.今回の検討では,手術時間の延長はあるものの,神経脱落症状などの合併症はなく,患者の神経症状の改善や術後の頸椎配列は良好であり,頸椎変性疾患に対する手術法のオプションの一つとして,combined approach は検討に値する術式であると考えられた.