抄録
症例は58歳,男性.主訴は左上腕外側に放散する左後頭部痛で,神経学的にはC2神経根症と索性疼痛を認めた.頸椎MRIでC1-C2レベルに両側椎骨動脈によるflow void および上位頸髄の圧排変形を強く認めた.椎骨動脈撮影ならびに3D-CT angiography で両側椎骨動脈が環椎軸椎間より脊柱管内へ入り,内側凸のループを形成することにより上位頸髄を圧迫していた.本症例では手術所見より椎骨動脈の転位は困難と考え, C1, C2の椎弓切除術を行った.術後症状は消失したが1年後に再発を認めた.現在,術後3年6ヵ月で術前症状の3分の1程度が残存している.過去の報告例と自験例の検討より,椎骨動脈走行異常による症状の恒久的緩解を得るためには責任血管である椎骨動脈の転位が必要と考察した.