脳神経外科ジャーナル
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前床突起部髄膜腫におけるシルビウス静脈の流出路の検討(<特集>頭蓋底静脈の基礎と臨床(1):海綿静脈洞-第22回微小脳神経外科解剖セミナーより-)
石橋 謙一一ノ瀬 努永田 崇森迫 拓貴後藤 剛夫大畑 建治
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2008 年 17 巻 9 号 p. 673-678

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抄録

前床突起髄膜腫におけるシルビウス静脈の静脈灌流パターンについて分析した.過去13年間(1995〜2007年)に手術した前床突起部髄膜腫の連続する20例を対象とした.シルビウス静脈の灌流パターンは,主要な静脈経路の名称にしたがって,cortical type,sphenobasal type,sphenoparietaltypeの3型に分類した.手術所見と術後急性期の臨床症状で静脈路温存について評価した.その結果,静脈灌流パターンは,cortical type 14例,sphenobasal type 5例,sphenoparietal type 1例であり,これまでの報告にある正常な灌流パターンとは頻度が逆転していた.Sphenobasal typeでは側頭葉の固有硬膜を腫瘍の外側まで剥離し,主要静脈路を含む硬膜と側頭葉をともに牽引することで,静脈路を損傷することなく十分な術野の確保が可能であった.静脈灌流障害によると思われる脳挫傷がsphenoparietal typeの1例において生じた.その他の症例においては,静脈閉塞によると思われる合併症はなかった.前床突起部髄膜腫では,腫瘍の増大に伴いsphenoparietal sinusが閉塞し,cotricalveinやsphenobasal sinusが主要な流出路になると思われる.Sphenoparietal sinusが主要流出経路として残存する例は少ないが注意を要すると思われた.

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© 2008 日本脳神経外科コングレス
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